「あーっ!今日から女のコとして一人暮らしなんだ…」
  小奇麗な1LDKのとあるマンションの一室。たくさんのダンボールの山と無造作に置かれた家具。その一つに背中でもたれかかって足を投げ出して、ティーカップからお茶を飲む僕。明日は4月、少し暖かくなる季節。そう言えば1年前、僕が高校3年を向える頃なんて、紅茶と言えば自分で飲むのは缶入りばっかだったもんなあ。
  傍らの大きなドレッサーには、ジーンズに茶色のセーター、そして何故かスポーツキャップを被った地味な姿の僕が映ってる。自分で言うのもなんだけど、可愛い男のコって感じかな。大きく背伸びしてみると、その鏡の中の僕も真似をする。でもその姿は、膝と脇をきゅっと締めて両手を真上に上げて、女のコみたい。えへへ、大分仕込まれたもんなあ。
  大体男のコの部屋に、こんな大きなドレッサーが有る事自体不自然だよね。10分前に帰っていった引越しの業者の人達も変な顔してた。でも若いのと年配の男性の2人、ちょっと見ても、何だか訳有りだと判ってしまう僕に対して不思議な顔してた。でも若い方の人、ちょっとカッコ良かったかも。僕いつのまにこんな事思う様になったんだっけ。
「ああっ、やっぱりこの格好窮屈だよっ」
  可愛いティーカップから、冷めた最後を飲み干すと、僕はすっと立ち上がりドレッサーの前へ。実は男のコの格好するの1年ぶりなんだ。
  おもむろにセーターを意識して可愛く脱ぎ捨てる僕、ドレッサーに映る僕の胸に巻かれた白いサラシ!。
「はあ、苦しかった…」
  それをするすると外すと、なんと僕の胸は!?
  なんと僕の胸には小さいけど女のコの乳房が!?胸自体はAカップの脹らみなんだけど、ツンとした乳首だけは、大きな苺色の、本当AVモデルの可愛い女のコのそれだった。
「あーあ、結局1年でここまでしか大きくならなかったんだよな」
  指でピンと弾くと、全身に響くビクッとした感覚が走った。
「これも邪魔…」
  キャップを脱ぐと、いくつものピンで留められた僕の髪が現れ、それを外してふるっと顔を振ると、耳元から肩へはらはらとかかる綺麗な髪。
  そしてジーンズを脱ぎ捨てると、股間には水色の可愛い女のコのショーツに包まれた、小さな脹らみ。それはもう何ヵ月も前に、男性としての機能を失っていた。
「あ、楽…」
  肌寒さと開放感で、僕はぶるっと体を振るわせる。ダンボールと新しい畳の匂いに、ほのかに女香になった僕の匂いが漂ってきた。そのジーンズを履いたのは1年ぶり。ウエストは緩く、ヒップと太腿はもうピチピチ。実際これで引越しの荷造りしたり荷物運んだりしたんだけどさ、パンパンでやりにくくって。それに1年間女の子修行した僕は、もう男の子の仕草を忘れちゃってた。下半身だけむっちりした僕が、引越し作業の荷造りの時、つい業者さんの前ですぐしゃがんだり、ペタン座りして荷造りしたり。そんな僕のお尻を、年配の人は事有るごとに触ってたっけ。業者さん!それってセクハラだよっ!

  ふと僕は傍らのリュックの中から1つの子瓶を取り出す。それは輪ゴムで1枚の手紙に包んであった。部屋の暖房を効かせ、僕はショーツ1枚の姿で両足を閉じ、三角座りで畳に座り、読み始めた。

「クラスネームKagerouこと、早川恵クンへ。

  元気してる?当施設無事卒業、そして明愛女子大学推薦合格おめでとう。4月からは女子大生ですね。引越し終わりましたか?引越しは大変だから必ず体が男の子のうちに済ませなさい。
 そして終わったらこの薬を一息で飲む事。そして飲んだらすぐに必ず柔らかいベッドか布団の上で休みなさいね。一生でたった1度の夢の様な経験が1時間程続くでしょう。それが終れば、あなたはもう恵クンではなく恵美さんです。

それでは、今後の恵美さんの幸せを祈って。時々遊びに来てね。

担当トレーナー 早乙女ゆり」

  手紙と小瓶を手にドレッサーの前に立つ僕。辛かったけど楽しかった1年間の事が頭の中に走馬灯の様に駆け巡る。陸上とかもやってた1年前、僕の体は浅黒く、それなりに筋肉も付いていたし、付き合っていた女の子もいたっけ。でも自分の気持ちに嘘付けなかった。
  …乳首が干しぶどうみたいになって、円筒形になって、筋肉がまたたくまに落ちて、胸が脹らんで…そして体は全身真白になっていった。
  毎日密かにしてた一人エッチだって、だんだん時間がかかる様になって。とうとう全身丸みを帯び始めた時には、もうそれもやりたくなくなっちゃった。そして下半身にだけ柔らかい女のコの肉が付き始めて、体から女のコの香りがし始めた時、とうとうそれは2度と出来なくなっちゃった。
  ビンのキャップを開けると、何か漢方薬の様な不思議な臭い。僕の手足がぶるぶる震える。
「恵、い、いくよ…」
  右手にビンを持ち、左手をツンと伸ばして、女のコが可愛くジュースでも飲む様な仕草で、僕は一気に小瓶をあおり、一気に飲み干した。すっごい嫌な漢方薬を焦がした様な後味、不味い!!
「あーー!どうしよっ!飲んじゃった!!」
  僕は2、3歩後ずさりした後、傍らのベッドにダイブ!!
「あっ冷たーい!」
  シーツの冷ややかさが僕の感じやすくなった皮膚を擽る。ところが、僕の体はすぐさま全身の火照りを感じ始める。
「あ、冷たくて…いい気持ち…」
  そしていきなり乳首に走るむずむず感、あ…これ我慢出来ない!
「あっあっ、あーーーーっ」
  僕は思わず両手を胸にクロス!その途端、退化した僕の男性自身付近にずっしーんと感じた不思議な、そして切ない感覚の痛み。それはすぐ波が引く様に消えていく。無意識のうちに両膝と両脇を締め、だんだん体の底から湧いて来る不思議な快感を受けとめた。いつのまにか、僕は体をくねらせ、お尻を左右に振り始めてしまう。
  遥か昔、鉄棒にお腹でぶら下がってジーンと感じた不思議な快感、それと似た、そしてそれより数倍も強い、なんとも言えないいい気持ち、それが、ズシーンズシーンと定期的僕の体を襲い、その度僕の口から男のコの声だけどよがり声が…。
「あっあっ、あーーん!」
  始まって5分も立たないのに、僕は全身に汗を掻き、顔は真赤に火照っている。そしてその時!
「ぴんぽーーーーーん」
  あろう事か。玄関のチャイムが!!
「なんで!?なんで!こんな時にーーっ!」
「早川さん、早川さーん!引越しの○○でーす!」
  その声はあの引越し業者の若い男性の方。僕が昔、部屋で女装している時に家族が入って来た時の様な嫌な気分!一気に気持ちが萎えてしまう!まっいいか。変身始まったばかりだし!
  大急ぎでさっきのセーターを着る。もうさらし巻いてる時間なんて無いもん!でっでも女性化した乳首がセーターに当たって…、あっあ…。
「いいっ!がまんするっ!」
  今度はGパン。立ちあがって、それを手に取りよいしょっと…あ、あれれれ!
(はっはいんない!お尻と、太腿が…!どうしよう!)
  たった数分の間に僕のお尻と太腿は更に脹らんだみたい!肉が潰れる痛みを我慢してようやくボタンがかかった。
(もっもう!こんな時に!!)
  僕は不機嫌そうに玄関のドアを開けた。その僕前に、申し訳なさそうにしているさっきの引越し業者の若い男性!
「すいません!自転車引き渡すの忘れてたんで、お届けにあがりました」
  そうだった!僕ママチャリの事忘れてた!ふとその男性は、顔を真赤にして髪の毛も長くしている僕を不思議そうに見つめ始める。
「あ、あの、さっきの方、あっあれ?早川えっとケイさんですよね?」
「あ、はっはいそうです」
  小声で答えた僕だけど、あきらかにオクターブ上がってる!!
「あっあの、そこに置いておいて下さい」
  やっとの事で声を戻して答えるけど…。
「すみません、受け取りにはんこ御願いします…あの、大丈夫ですか?何か気分が悪そうですけど…」
「なっなんでもありません!」
  僕は胸の脹らみを左手で隠しながら部屋に戻る。本当にもう!なんでこんな時に!えっと、あれ?はんこ…はんこ…無い!!なんでーーっ!
  セーターに当たる乳首、容赦なくズシーンと来る下半身のHな気持ち、だめだ、頭が混乱する…。
  何度かの快感に耐えきれず、僕は洋服タンスの前でがくっと膝を付く。
(あっ、あっ、ああああん)
  声に出さないのがやっと。だめだ、立ちあがれない!!下半身のサイクルをぼーっとする頭の中で計算して、その間を見計らってやっと僕は立ちあがれた。
(お、お尻が、突き出始めてる!!)
  変に腰に感じた違和感、前につんのめりそうになった時、やっと僕は机の引出しに入れたはんこの事を思い出す。急いでそこに行こうと走った時、胸がプルンと揺れた。
(ひゃん!!)
  セーターに擦れる乳首の感覚が!ああんもう!気が遠くなるぅ!
  それでもなんとかはんこを取り、僕は玄関へ急ぐ!
「す、すいません!はんこです…」
  その時その業者さんは、僕を見てどきっとしたみたい。
「あ、あの本当に早川恵さんですか。あの、女性の方??だったんですか?」
  ああっしまった。胸を隠すの忘れてた!。急激に成長したそれは、セーターに包まれながらもふっくらと丸い脹らみになって、そしてその先っぽにはツンと突き出た乳首がくっきり!
「あ、あの!ぼ…あたし妹です!」
  その男性は震える手で受け取りにはんこを押し、僕の手に渡す。ところがその瞬間、股間に今までにない強烈な快感!
「あっあああん!」
  何かが僕のあそこを体の奥へ付き返しているみたい。ああとうとう他の人の見てる前で!僕は恐る恐るその男性の顔を見上げると、目を見開きポカンとしている彼!
 僕の全身に女のコの快感が走っていく。さっきカッコイイと思ったその若い男性の引越し業者さん!僕の目にはその人が、とっても素敵な人に思えて…。僕の目には、その男性の周囲にもやがすーっとかかり、背後でキラキラ星が輝き始めた。もう押さえる事は無理だった…。無意識のうち、壁についた手の上に顔をしなだれかけ、片方の手は大きく脹らんだ胸の下へ、下半身がジーンとしていっちゃう!。
「あはん…いい男ね…」
  ぼーっとした僕の口からこんな言葉が!明かに、彼は数歩引いた。
「失礼します!」
  彼は思いきりドアを閉め逃げて行く様に立ち去っていく。
(バカー!僕のバカー!何てこと言っちゃうの!)
  ふと我にかえった僕は、ドアの鍵をしっかりかけ、ドレッサーの前に立つ、僕の口から溜息の声が…。
「僕…こんな姿で応対したんだ…」
  引越し時と同じ服なのに、鏡の中の僕は、もう男じゃなかった。大きく脹らんだ胸、ぱっちりした目と長く伸びちゃった睫毛にふっくらした頬。肩の線はもう女のコのそれだった。
「ええい!もうどうにでもなったらいいじゃん!」
  更にオクターブが上がった声で一人叫ぶ。それと同時に僕は再びセーターを脱ぎ捨て、ジーンズをぎゅっと脱ぐ。自由になる胸の脹らみとボリュームの出てきたお尻、そして丸くなっていくお腹!
  再びベッドにダイブし、僕は変身の続きを味わった。もう誰も邪魔はしない。体から男の子が消えて行く切ない気持ちに、たまらず傍らの掛け布団を手足でぎゅっと握り締めると、ちょっとだけ体が落ち付くのに気付く。下半身の快感のサイクルがだんだん短くなっていく。小さくなっていく男性自身を布団に押し当て、誰もいないのに、意識して可愛くお尻を振り始める。男性自身はもはやお尻の方に向って生えているみたいな感覚になっていた。
「やん、やーーーん…」
  すっかり可愛らしい声になった僕、ふと僕は布団を捨てて、ベッドの上で四つんばいに。両手と両足をしっかり締め、まるでネコになったみたいなポーズであえぎ声を上げ始める。
  すべすべ、とろとろになっていく体、胸からロケットみたいに下がって行く胸、そして一振りする度に大きくなっていく様なお尻。こんな所からくびれるの!?て感じで細くなっていくウエスト、縦に伸びていくおへそ。声はだんだん普通の女のコの声から、とうとうアニメの女のコキャラみたいな声になっていく。
「あ、あん。これって変身しすぎだよぉ」
  汗だくになった僕の口から、ロリっぽい音色でそんな声が出る。大きくなり続ける胸は、4つんばいになった時とうとうベッドのシーツに触れる位に脹らみむ。そして僕のお腹の快感が激しくリズミカルになっていく。
(それは今から思えば、あきらかにエッチしている女のコが味わう気持ち良さと同じだった)
「あ、あん、何か破けちゃったみたい」
  僕の股の間から太腿を伝って、とろとろっと何かの暖かい体液みたいな物がベッドのシーツを濡らし始めた。男性自身は、その近くに出来たらしい新しい柔らかな組織にだんだん包み込まれ、やがて飲み込まれる様に消えていく。あ、もうだめ…。
「あん、僕の…」
  思わず手をそこに宛がうと…、ちょっと粘っこい暖かい体液で濡れたあの…
「僕、女子大生になっちゃうんだ…」
  出来たばかりの女のコの部分、そこから何かの液体がまるで潮を吹くみたいに…。
「あ、あん!僕、僕いっちゃうーん!」
  アニメのヒロインの様な可愛い声でよがり声を上げたその途端、全身の力が抜け、僕はベッドにうつ伏せた。1年前、男らしいスポーツマンだった僕は、こうして暖かくて、丸くて、柔らかくて、白くって、可愛い声した愛らしい生き物になっちゃった。
  そのままふと気を失う僕。静かになった部屋に微かな可愛い寝息の音が響いている。
  

  エアコンから暖かい風を送るゴーッという音、それで僕はふと目を覚ました。うーんどれくらい眠ってたんだろ。あ、もう夕方…、僕5時間位寝てたのかな。こんな格好じゃ風邪ひいちゃう。
  ベッドから体を起こそうとした僕は、ついふらっと尻餅をついてしまう。あれ、足の支点の位置がなんだか変。あ、そうか無事女のコの体になったんだっけ。
  僕はゆっくり立ちあがったけど、あれ、なんで?歩くとお尻がこんなに揺れる??わあ、やーだ、お尻の肉がこんなに動いてる。腰が少し痛い…。なんで、ちょっと!女のコってこんなに歩き難いの??
  数歩歩いて、すぐ僕は太腿に少しパリパリする感覚を覚える。そして長く伸びたお腹ごしに見える体液まみれの可愛いショーツ、それも乾いてパリパリしている。
「シャワー浴びよっと…」
  僕はショーツを脱ぎ、傍らの籠に投げ捨て、シャワーの湯を浴びた。
「あーっ、気持ちいい。こんなに気持ちいいシャワー初めて…」
  前は普通に浴びていたシャワーだけど、女のコになった今、微かな湯の温度差まで判るみたい。滑らかで白く、すべすべになった僕の肌の上に水玉の様になって流れるシャワー。えっと、そうだった僕女のコになったら一番最初にシャワー浴びて、女のコ自身を確認しようと…、えっと?あれれ?そんな事思ってたんだっけ?別にそんな事しなくてもいいじゃん。女なんだから…。
  あれ?女の子である事に興味無くなったのかな?今度は胸に湯を当ててみる。あれだけ憧れた女のコの柔らかい胸、女になったら気の済むまで触ろうとしてたんだけど、
「どうって事無いじゃん…只の脂肪の塊じゃん。僕こんなのに憧れてたの?バカみたい…とにかくきれいに洗わなきゃ」
  あれれ?どうしたんだろ僕?あれほど女のコになったらこうしたいって、いろいろ考えていたはずなんだけど。
(何つまんない事言ってるの。女なんだからそんなはしたない事考えるのやめなさい)
  憧れていた事、したかった事、何かしようとすると頭の中からそんな声が聞こえちゃう。まいいか。それよりやんなきゃいけない事一杯有るじゃん。ご近所の挨拶とかさ。
  なんか頭の中で興ざめした気分がぬぐい切れないんだけど、僕は胸にバスタオルを巻き、髪をタオルで乾かし始める。頭の中はご近所の挨拶の言葉どうしようとか、今日何食べよかとか、明日入学式どんなのかな…なんて思い始めてる。
「えっと、お隣さんの挨拶だけどぉ」
  独り言の様に呟き、ドレッサーの扉を開けると、色とりどりの女のコの服。
「うん、これにしよっと!」
  僕の手には派手な可愛いスーツが…。でも、あれれれ?
(何バカやってんの。隣に行く時そんなめかし込んでどうするの?地味な格好にしなさいよ)
  結局選んだのはTシャツと上着のピンクのアンサンブル。えっとスカートは…、いきなりスカートで行くの恥かしいな。これが地味でいいかも?
  僕の手に摘まれたのは、なんとベージュのピタパン。えっと化粧道具って出すの面倒だし、うーんと、このメガネかけていけば?
  新しい黄色のコットンのショーツは僕の股間にピッタリフィット。むにゅむにゅする感覚が何だかエッチっぽい…ともう思わない。むしろ、ちゃんとガードしなきゃって感覚に変わってる。ブラ付ける時も、今までちゃんと後ろ手で付けてたのに…
(いいの。付けてりゃいいのよ。それよりこんなに大きくなっちゃってさ!全部買いなおしじゃん!いくらお金かかると思ってんのよ!)
  ハーフカップのブラを取り出して、ホックを前で付けて、ぐるぐる後回し。あ、胸が支えきれない…後で買いにいかなきゃ…。
  次にピタパン、憧れていた女のコのお尻になったけど、わあ!女のコのお尻って以外に大きい!履くというより、まるでくるんと包み込まれる感じ。それに、なんでお尻に重力を感じるのよ!やだあ、女尻って、大きくてみっともないーっ!

  あれこれ違和感を感じながら身支度をしてドレッサーを覗くと、そこには地味だけど清楚なメガネッ娘が映っていた。大きな胸、きゅっと縊れた腰と大きく横に張り出したヒップ。そっか、本当の女のコって、派手にしなくても何着ても可愛いんだ。

 僕は傍らの紙袋の中から自家製の小さなパウンドケーキの1つを取りだし、地味な黒のサンダルをつっかけお隣のドアをノック。
「はーい」
  と可愛い声と共に現れたのは、白のセーターにやはりベージュのピタピン姿の、女子大生?
「こんにちはー。隣に引っ越して来た早川恵美といいます。これつまらないものですけど」
  僕は施設で一生懸命練習した仕草と女言葉を使って、笑顔で彼女にご挨拶。
「えー、あなたもですか?私もそうなんです。今荷物の整理中で…」
  ふと彼女の部屋を覗くと、整理された部屋の奥にはダンボールの山。
「わあ、あなたも今日なんですか?えっと、あなたは…」
「あたし薫っていいます。ひょっとして明愛の新入生さん?」
「あっあたしそうなんです。明愛の文学部なんですぅ」
「えーっ、薫さんもー!あたしもそこの文学部なんです」
「あー良かった。でもなんかアニメの女の子みたいな可愛い声ですね、早々とお友達が出来たみたい。ねえ、うちでお茶しません?」
「あっあっ、いいですね。じゃちょっと部屋に鍵掛けてきますーっ」
  丸く大きくなったお尻をくるっと彼女に向け、僕はまだ慣れないお尻を持て余しながら自分の部屋に鍵をかける。
「恵美さん、ガードル無しですか?」
  ぎくっとして僕は、え?という感覚で薫さんを見る。なんでそんな所とかチェックするんだろ?
「いいですね。ガードル無しでも可愛いお尻だし、スタイルいいし」
「あ、ありがとうございますぅ」
  なーんだ、特に意味無いのね。たちまち友達になった薫ちゃんににっこりと微笑む僕…いや、あたし!。
「ねえ、恵美さん?明日の入学式どんなの着て行くんですか」
「え、あたしはね…」
  ショーツのラインとマチの部分がくっきり浮き出たピタパンに包まれた大きなあたしのヒップ。それが薫ちゃんの部屋のドアの向こうに消えて行く。

男のコ、早川恵クンはもういない。

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